名誉校長挨拶(梯實圓和上)

学仏大悲心

梯實圓行信教校の百余年の歴史を貫いて流れる建学の精神は、「仏の大悲心を学ぶ」という一語に尽きます。それは善導大師が仏道を歩む人をたたえて「仏の大悲心を学びて長時に退くことなきひと」といわれた言葉に依っていました。仏道を学ぶということは「大慈悲心」である仏陀の御心を学ぶことだったからです。

慈悲の「慈」とは、すべての者に愛欲と憎悪を超えたまこと平安を与えようと願う心であり、「悲」とは、すべてのものの痛みを共に痛む、痛みの共感を意味していました。阿弥陀仏とは、このような大慈大悲の心をもってすべてのものを包み、愛欲と憎しみを超えた怨親平等の浄土へと導きたまう如来でした。

ひるがえって私どもを取り巻く現実は、おおよそ如来のお心とは真反対の在り方をしています。自己中心の想念をもって、自分達に都合がいいか、邪魔になるかでことの是非、善悪を判定し、利益になるものは際限もなく取り込み、邪魔者は正義の名において抹殺しようとして、互いに憎み合い、恨みあって、果てしない抗争に明け暮れています。

こうした中で、仏の大悲心に呼び覚まされて、怨親平等の浄土こそ真実の世界であると信知し、自分だけの幸せを求めている自分の愚かさに気づかせていただき、少しでも仏意にかなった生き方を学ぼうと努めているのが行信教校なのです。

行信教校 名誉校長 梯實圓
(2014年5月7日ご往生)